修理や改良にかかった費用は全額経費でしょ?

こんにちは、千葉の女性税理士・竹山百代です。

事業用に持っている固定資産について、修理や改良をした場合には、かかった費用は全額経費にしたいですよね。
ただ、ここでも、全額一回でその年の経費にできるか、一旦資産に計上して、数年に分けて減価償却費として経費化するかの判定をしなければいけません。

修理や改良にかかった費用は、会計用語で「資本的支出」または「修繕費」のどちらになるかの判定をします。

「資本的支出」の場合は、新たな減価償却資産の取得として資産計上ののち減価償却をします。

「修繕費」の場合は、全額支出した年の経費として処理します。

 

では、どのようなものが「資本的支出」になるのか。(国税庁のHPより)
・建物の避難階段の取付けなど、物理的に付け加えた部分の金額。
・用途変更のための模様替えなど、改造や改装な直接要した金額。
・機械の部分品を特に性質や性能の高いものに取換えた場合で、その取換え金額のうち通常の取り換えの金額を超える部分の金額。

とあります。

つまり、もとからある資産に新たな機能を付け加えたり、性能がよくなるような修理や改良をした場合は、よくなった部分に要した金額は修繕費ではなく資産計上してくださいということです。

次に、「修繕費」となるものは以下の通り(国税庁のHPより)
・建物の移えい又は解体移築に要した金額
・機械設備の移設に要した金額。
・地盤沈下した土地を沈下前の状態に回復するための金額。
など
もとから有する固定資産の修理、改良のための支出のうち、通常の維持管理のため又は原状回復をするための要した金額とあります。

例えば、賃貸ししている部屋の修繕を例にしてみると、

数年居住用で使用して壁紙や畳などが劣化して修繕をした部屋について。

壁紙の張替や畳の取り換えは、使用前の状態へ「原状回復」させるための金額なので、修繕費となりますが、その部屋を居住用ではなく事務所用に改装した場合は、「原状回復」するだけでなく「用途変更」が含まれますので、全額が修繕費ではなく、用途変更に要した部分の金額は資本的支出となり、資産計上ののち減価償却をしないと経費となりません。

また、駐車場として使用していたアスファルト舗装していない土地について、敷き詰めた砂利が削れて穴があちらこちらに開いて水溜りができて、使い勝手が悪くなったので、穴を埋めて元通り平らに砂利で舗装し直した場合は、「原状回復」するための費用なので、修繕費ですが、穴が開かないようにアスファルト舗装するということになると、今までの砂利の土地の上に、アスファルトという新たな構築物(減価償却資産)を設置したということで、アスファルト舗装にかかった金額は資本的支出となり、資産計上したのち減価償却をすることになります。

今、具体例を二つ書きましたが、実務上「資本的支出」と「修繕費」の区分計算は困難な場合が多いです。そのため、計算の簡便性を考慮して、下のフローチャートにあるような形式基準による判定をします。

 

修理・改良のための支出金額
20万円未満か(注) ―YES→ 修繕費
↓NO  
周期がおおむね3年以内か ―YES→ 修繕費
↓NO  
資本的支出 ←YES 明らかに価値を高めるもの

又は耐久性を増すものか

 
↓NO  
通常の維持管理のためのものか ―YES→ 修繕費
↓NO  
60万円未満か ―YES→ 修繕費
↓NO  
前期末の取得価格の10%以下か ―YES→ 修繕費
↓NO
資本的支出

上のフローチャートの判定以外に、災害に伴って支出した修理・改良等の費用についてなど複雑なパターンは、具体例がわからないと判定できないものもあります。

(注)修理・改良等の金額が20万円未満かどうかは、一つの計画に基づく同一の固定資産への支出額の合計で判断します。その費用が2年にわたって支出された場合は、各事業年度ごとに要した金額で判断します。

 

資産を購入した場合の資産計上は、計上間違いということはあまりありませんが、修繕費が実は資産に計上すべきものだったという間違いはよくあります。決算で会計処理の確認をする際の要注意ポイントとして気を付けましょう。

 

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